鼻詰まり(慢性)について

 鼻腔内の粘膜には多くの毛細血管が通っています。それらの毛細血管は、鼻炎、副鼻腔炎といった炎症などによって拡張し、その結果、鼻腔内の粘膜が腫れ、鼻詰まりが生じます。

 漢方では、鼻は五臓の『肺』と関係が深いと考えられています。五臓の肺は、呼吸、体液の代謝、体温調整などをつかさどる機能であり、これらの不調が鼻に反映され、鼻詰まりという症状が生じます。そのため、鼻詰まりの根本原因となっている五臓の肺の機能を漢方薬で立て直すことにより、鼻詰まりを改善していきます。

①肺熱
 風邪をひいた後や暴飲暴食などにより、肺に熱がたまり、鼻詰まり、膿性の鼻汁、頭重感、喉の渇きなどの症状が起こります。舌は赤く、黄色い舌苔が付着します。副鼻腔炎と診断されることが多いです。肺熱をとる『辛夷清肺湯』などの漢方薬を使います。食事で脂っこい物や辛い物、甘い物は減らして頂きます。

②水飲(すいいん)
 飲食の不摂生や疲労、慢性的な体調不良などにより、体内に過剰な水分がたまり、鼻詰まり、透明な鼻水、くしゃみなどの症状が起こります。舌が腫れぼったく、舌の縁に歯形がついていることもあります。舌苔が白く、冷えを伴う場合は『苓桂朮甘湯』のぼせ、赤い舌など熱証を伴う場合は『越婢加朮湯』などの漢方薬を使います。

③肝鬱気滞(かんうつきたい)
 体の諸機能を調節する臓腑である肝の気(肝気)の流れが滞っていて、肺の水液調整機能が乱れて鼻粘膜に水液がたまり、鼻詰まりの症状が起こります。肝気が動きやすい季節の変わり目や朝に症状が出やすいです。いらいらしやすい、胸のつかえ、下痢と便秘を繰り返すなどの症状を伴う場合もあります。肝気の流れを良くする『四逆散』などの漢方薬を使います。

④血瘀(けつお)
 血流が滞りやすい体質で、ストレスや冷え、体内の過剰な水分などによりこの体質になることがあります。血行不良により鼻粘膜に水の停滞が生じやすく鼻詰まりが生じます。血行を促進する『桂枝茯苓丸』などの漢方薬を使います。

 鼻詰まりが慢性的になっている場合は、普段の生活により治りにくくなっている場合もあります。脂っこい物、甘い物、冷たい物の摂りぎには注意してください。体内の水の代謝を良くするために、お風呂では湯船にゆっくりつかる、運動で汗をかくなどの対策も必要です。また、水分の過剰摂取にも気を付けて下さい。