下痢について

 慢性的に下痢になりやすい方は、胃腸が弱い方が多いと思います。疲れやすく、便はしっかりした形ではなく泥状で、時に水様の便が出ることがあります。お腹の痛みはひどくはありません。舌は白っぽく、ぽってりとしています。このような方は『脾気虚』証と言い、消化器系の機能が弱い体質です。胃腸を丈夫にする漢方薬として『四君子湯』や『六君子湯』があります。また、お腹や手足が冷えやすく、消化不良気味の方は『脾陽虚』証と言い、『人参湯』などお腹を温めて消化吸収機能を高める漢方薬を使います。

 ストレスや緊張でお腹が張ったり、ゴロゴロして便意を催す場合はストレスや緊張により、肝気の流れが悪くなっていて、脾の機能が失調して下痢が生じます。このような場合には肝気の流れを良くする『四逆散』や『加味逍遥散』などの漢方薬を使います。また、もともと胃腸が弱く、ストレスの影響を受けやすく下痢しやすい場合は消化器系の機能を高めつつ、ストレスを和らげる『桂枝加芍薬湯』などの漢方薬を使います。

 普段、胃腸が丈夫な方でも、冷たい物を飲食し過ぎたり、不潔なものを食べたりして下痢をすることがあるとます。脂っこいもの、刺激物、味の濃いもの、生ものやアルコール類を日常的に多く摂取していると、体内に湿熱が蓄積されます。湿熱が消化吸収機能を阻害して下痢が生じます。便がねっとりしている、便がくさい、口が渇く、口臭がする、舌に黄色い舌苔がべっとりと付着しているなどの症状がみられます。このような時には、湿熱を除去する『茵蔯五苓散』などの漢方薬を使います。

 冷たい飲食物の摂り過ぎや、寒い環境にいて下痢になった場合は、寒冷刺激により発生した寒湿が脾胃の機能を低下させている状態です。便の臭いは強くなく、便は水様で、時に未消化便となります。このような時には、体を温めて消化吸収機能を強める『胃苓湯』などの漢方薬を使います。

 お腹の調子を整えるためには、脂っこいもの、味の濃いもの、冷たいものは飲食し過ぎないようにして下さい。また、食事は良く噛んで(1口30回が目安)、水分で流し込まないようにしましょう。水分は1度に沢山飲むのではなく、喉が渇いたら少しずつ飲むようにして下さい。